『傲慢と偏見』のチェ・ジニョクが除隊後初のドラマとなる本作は、彼の3年ぶりの主演ドラマとして注目を集めました。
除隊後初と言うことで、真剣に作品を選んでチェ・ジニョクが辿り着いた本作で俳優として完全復活を遂げました。
相棒役に『純情に惚れる』のユン・ヒョンミンを迎えて、二転三転する犯罪を解決するエリート刑事と過去から来た熱血刑事という最高のタッグで観る者を惹きつけます。
強行係の顧問役として謎めいた女性犯罪心理学教授に本作がTVドラマデビューとなるイ・ユヨンも加わり、先の読めない展開はケーブルのOCN局の醍醐味と言っても間違いありません。
2017年に放送された『愛の迷宮~トンネル~』は同時間帯視聴率ナンバー1、OCN開局以来の最高視聴率を記録するという歴史的快挙を達成しました。
タイムスリップの要素を軸に、ラブロマンスやサスペンスも盛り込んだヒューマンドラマとなっていて、精神的な戦慄や感動も与えてくれてます。
アジアで「トンネル」ブームが起こったという話が納得できる、観だしたら止まらないクライムサスペンスの金字塔です。
(画像はhttp://enews.imbc.com/News/RetrieveNewsInfo/201905より引用)
『愛の迷宮~トンネル~』あらすじ
1986年、ヨンスクと幸せな新婚生活を送っていた刑事グァンホは、連続殺人事件を追う最中にトンネルで犯人に襲われ気を失ってしまう。目が覚めると、愛する妻を過去に残したまま、30年後にタイムスリップしていた。困惑しつつも新入り刑事を名乗って警察署に入り込んだグァンホ。未だ事件が解決していないことを知った彼は、過去に戻るヒントを見つけるため新たな相棒ソンジェと再び捜査に乗り出す。グァンホがヨンスクへの恋しさを募らせる一方、ソンジェは心に同じ傷を持つ心理学者ジェイに惹かれ始めていた。愛する女性のために奔走する2人の男を待つ、衝撃の真実とは――!?
公式ページより引用
『愛の迷宮~トンネル~』見どころ
トンネルでの事件をきっかけに30年後の世界へとタイムスリップしてしまった刑事パク・グァンホ(チョ・ジニヨク)は、自分が30年後の2016年に来たことに何かあると刑事独特の勘を働かせます。
自分のタイムスリップと同時にファヤン署に転勤する筈だった同姓同名の行方不明の刑事の存在を知り、うまくその刑事としてファヤン署に刑事として潜り込むことに成功します。
時代の波に取り残された過去の遺物のような刑事が、現代という時代に馴染んでいき、30年前の事件の様相をヒントに現在で興っている事件との繋がりを探って行きます。
そこで30年前と今の事件の犯人が同一人物であり、その犯人を暴くために自分が時間を超えてやって来たのだと確信します。
1986年から見知らぬ世界へ
1986年ファヤン警察署に勤務する熱血刑事パク・グァンホは女性の殺人事件の謎を追っています。
妻のヨンスク(イ・シア)と結婚して幸せな私生活を送りながらも、仕事ではストッキングで首を絞められるという連続女性殺害事件が彼を悩ませます。
グァンホは後輩のソンシク(キム・ドンヨン)と連れ立って捜査に当たりますが、なかなか犯人に繋がる有力な情報が掴めません。
そんな時、とあるトンネルでソンシクは犯人と思しき人物と揉み合い、殴られて意識を失ってしまいます。
グァンホが目覚めた時にはそこは彼の知っている世界ではなくなっていたのです。
最悪の相棒・ソンジェ
30年の時を超えたことに気付かないグァンホはファヤン署にいて捜査をしていた刑事キム・ソンジェ(ユン・ヒョンミン)を見たこともない怪しい男として手錠で縛って眠ってしまいます。
朝になり、見たこともない場所と面々の刑事に驚くグァンホですが、そこは偶然にも同姓同名のパク・グァンホという刑事の異動があり、自分の名前で階級は以前よりも下の状態から刑事をすることになるグァンホ。
不満はありますが、自分の立場が理解できないうえに、30年という最新鋭の未来に来た隠せない驚きはありますが、現代に来たからにはそこで生きることしか道はなく、甘んじて今の状況を受け入れます。
最初に手錠をかけたソンジェはもともと医学を専攻していたエリートでしたが、ある事件のために医学の道を捨てて刑事になった、一匹狼です。
誰も彼の心はわからないし、誰とも打ち解けようとしない優秀であるが故の傲慢さに見える刑事ですが、新人としてきたグァンホの相棒として抜擢されます。
お互いに忌避しているだけに相棒としても最悪のコンビで行動もバラバラですが、そんな2人が捜査を続けていくうちに仲良くなるのは観ていてとてもほっこりしました。
互いに忌避していた2人がどのように心を繋げていくのかは絶対に見逃せません。
グァンホの正体を知る者
グァンホが自分の元先輩だと知った強力係チーム長であるたソンシク(チョ・ヒボン)の態度が変わっていくところは笑わずにはいられません。
どう考えても見た目はソンシクの方が年上なのに、部下として配属されたグァンホに敬語を使い、あろうことか「先輩」とまで呼ぶ始末です。
ソンジェはもとより、同じチームのミンハ(カン・ギヨン)、テヒ(キム・ビョンチョル)からもその態度を怪しまれますが、なんとかグァンホが過去から来た刑事だということはごまかし切ります。
しかし、2016年にグァンホが過去に戻れる手掛かりであると信じる同姓同名の刑事の失踪が凄惨な死を遂げた結末であると知ったソンジェから現代のグァンホ殺しを疑われ、窮地に立たされたグァンホは自分が過去から来た刑事であることを告白します。
そんな荒唐無稽の話を現実主義者のソンジェが信じる筈もないのですが、自分の父親が過去の事件で会ったパク刑事だと言った事により、ソンジェの理解を超えた出来事が今起きているのだと気付きます。
認めたくはありませんが、認めるしかない事実が浮上してくる中、最初は疑心悪鬼だったソンジェもだんだんと過去から来たという事実に符合する出来事を思い出し、グァンホの時間を超えた話を信じるようになります。
犯罪事件の顧問、心理学者のシン教授
キム・ソンジェも孤独で取り付く島もない一匹狼でしたが、彼よりまだ人間的に感情の起伏を伺わせない、爬虫類のような表情しか見せない心理学者のシン・ジェイ(イ・ユヨン)が犯罪捜査の顧問として加わります。
死体を見てもその死体や殺人現場を詳細に調べて、淡々と犯人の心理を分析する彼女の様子は普通の女性にはありえない血の温かみが感じられません。
彼女の性格や心情は育った環境にあったようですが、そこにはグァンホも自分では知らない拘わりがあったようです。
すべては1986年から自分がいなくなった事柄に起因して、ソンジェとジェイの人生を別物に変えてしまったことが物語を見ていくうちに明らかになって行きます。
これは本当に殺人犯を捕まえるために人間には予測不可能な大きな力が働いて、グァンホに時を超えさせただけなのでしょうか。
本当にグァンホの存在が過去から消えてしまったことにより、ソンジェとジェイが今のような性格になってしまったのだとしたら、人間を超越した存在━━敢えて言えば、神とか時間軸の修正者がいるとするなら、とても残酷なことだと思いました。
現代では消息不明の妻ヨンスクの居場所をソンシクに命令して探させるも、行方不明の存在として一向に捗らず、不安な日々を送るグァンホは1986年に戻って愛しい妻と再会したい想いを強く願うようになります。
グァンホは無事に1986年に帰還することができるのでしょうか。
そして、グァンホが帰還することにより、狂わされたソンジェとジェイの運命は孤独とは無縁な正しい軌道を描けるようになるのでしょうか━━。
『愛の迷宮~トンネル~』キャスト相関図
『愛の迷宮~トンネル~』感想
このドラマの目が離せないところは犯人が特定できているのに、なかなかその犯人逮捕に至らないところです。
それどころか確実だと思われていた犯人が別の人物だったというジャンルドラマの得意なOCNならではの読めない展開に唖然としますが、そこがアメリカやヨーロッパからも注目された起因なのではないでしょうか。
何よりもこの『愛の迷宮~トンネル~』を視聴していて気になるのはグァンホの過去への帰還と、ソンジェとジェイの恋模様です。
最初ソンジェとジェイは互いに惹かれるものを感じながらも慎重に距離を置いていますが、サービスエリアでの殺人事件の発生により、道が寸断されて孤立した休憩所でお互いの幼少期を打ち明けたことにより2人の距離はぐっと近寄ります。
感情を表に出さないソンジェとジェイの2人の過去やこれからの関係も、連続殺人の解決同様にとても気になる展開が待っています。
サイコパスのチョン・ホヨン
最初に過去からの連続殺人犯として捜査されたのはチョン・ホヨン(ホ・ソンテ)です。
グァンホとソンジェの息の合ったアクションシーンからの逃亡劇などハラハラドキドキが止まらない見せ場をたくさん作ってくれます。
30年前に4番目の被害に遭った女性の最期をたまたま見ていたホヨンはあたかも自分が手をかけたように被害者の息子であるソンジェに語り、今まで冷静だったソンジェを激昂させます。
当時幼かったホヨンはその時に盗み見た殺人という行為に興奮を覚えてしまい、成長することでサイコパスとなり、昔の殺人事件の模倣ともいえる殺人事件を起こしていたのです。
現代の連続殺人犯であるホヨンを逮捕しようと躍起になるグァンホとソンジェですが、ホヨンはある人物と会ったがために自殺という選択肢を選び、捜査をかく乱させてしまいます。
ソシオパスのモク・ジヌ
30年前からの殺人の真犯人でホヨンを自殺へと導いたのはソンジェの崇拝する解剖検査医のモク・ジヌ(キム・ミンサン)でした。
今まで他人には話せないことをすべてソンジェは尊敬する先輩医師のジヌにだけは打ち明けていましたが、一番の悪人に信頼を置いていたのです。
ジヌは学生時代から殺人を続け、現代に過去の自分の模倣犯のような殺人事件が起こったことにより、自己顕示に駆られたのです。
ジヌの特徴はホヨンと違って完全なるソシオパスでした。
反社会性パーソナリティー障害と言われる「ソシオパス」の人格を持つジヌは表面は冷静で明晰な解剖医として活躍しているだけにソンジェから一目置かれていましたが、逮捕してみるとその人格が明らかに破綻していることに愕然とします。
過去と現在を繋ぐトンネル
グァンホは一度ジヌが犯人と気付いてから過去に戻っています。
トンネルでジヌと争って目覚めて外に出ると、懐かしい30年前の世界が広がっていました。
会いたいと願っても会えなかった妻ヨンシンとの再会をしたグァンホは30年後の未来のことを妻に教えますが、妻は楽しそうに聞いています。
そこでグァンホは30年後の未来に自分の娘に会った事、名前は2人の名前から取ったヨンホということ、綺麗に成長した娘だったことを語り、まだグァンホに妊娠を告げていなかったヨンシンは驚きます。
そこでやっと自分の夫が未来に行き、自分の娘に会ったのだと知ると未来の話を信じて聞くようになります。
過去のうちにんなとか連続殺人犯を捕まえようと奮闘しますが、またしてもジヌにトンネルで会って未来に戻ってしまいます。
時間を超えた刑事
現代へ戻り、ジヌを捕まえて事件は無事終結し、過去に戻る決意をするグァンホですが、過去に戻るには辛い理由もありました。
今までチームとして働いてきた同僚に自分の本当の正体を打ち明け、送別会をしてもらうも皆グァンホとの別れを惜しみます。
特にチーム長のソンシクは30年ぶりに出会えた姿の変わらない先輩との名残を涙と共に訴えます。
冷静なソンジェでさえ、別れを辛がってくれます。
送別会の後で、何よりもグァンホが一緒に時間を過ごしたかったジェイと初めて食卓を囲みます。
ジェイは父の失踪と言う出来事の後に母親を亡くし、アメリカへと養子に出されたという辛い過去を持っていたために感情表現が上手くできないグァンホの娘ヨンホだったからです。
ジェイがヨンシンに渡されたお守りの笛を持っていたことから、グァンホはジェイの正体に気付き、ずっとあれこれ付きまとい、ソンジェとの関係も認めないと口出ししていたのです。
自分の生まれる前の父親に会えるなんて、絶対にはありえないことですから、こんな運命の出会いは双方新鮮だったことでしょう。
自分の知らない時間を過ごした娘と父親が出会い、新たに親子としての絆は築いていても、イケメンの年齢も自分とはそう違わない父親と娘という不思議な感慨は一入だったことでしょう。
短い期間ですがジェイとの親子の情愛とソンジェとの友情を深めたグァンホは後ろ髪を引かれる思いでトンネルに入って行きます。
ソンジェの「ジヌはいないのに過去に帰れるのか」と心配ながらに言った言葉と、何も言葉が出ずに姿を見守るジェイの涙を湛えた表情はこちらまで胸が熱くなりました。
グァンホは互いに寄り合うソンジェとジェイを温かく見つめて「まだ2人の仲を許していはいない」と言い続けていましたが、最後にソンジェにかけた言葉は「また会えて良かった、成長してくれていてありがとう」という30年ぶりに出会えた被害者の子供に向けた慈愛に満ちた感謝の言葉でした。
それから、愛する妻の待つ1986年へと戻るためにトンネルに呑みこまれるように入っていくのです。
『愛の迷宮~トンネル~』まとめ
最後にグァンホがトンネルに入って過去へと戻る時に、せっかくソンジェとジェイが仲良くなったのにグァンホが過去へ帰ってしまうとそもそも2人が出会うこともなくなり、永遠に結ばれないカップルが誕生してしまうと心配してしまいました。
でもこの『愛の迷宮~トンネル~』というように愛により謎が解き明かされ、トンネルが足が掛かりとなって主人公をタイムスリップさせる物語ですので、そんな心配は無用でした。
グァンホはきちんと過去に戻りいい父親としてヨンホと妻と楽しく暮らしています。
たまたま遊びに来てはヨンホを可愛がってくれるのは近所の被害者の息子のソンジェです。
ソンジェも過去にグァンホが帰ったことにより、頑なな一匹狼の未来が待つ少年ではなく、ヨンホを可愛がる優しい子供として変わっていました。
後は2人が幼馴染としてして過ごし、未来の年相応に老けたグァンホに仲を認めてもらえることでしょう。
無事に過去に戻り、グァンホが事件の犯人を追っている時通りかかった産気づいた妊婦を助け、男の子を出産した妊婦がグァンホの名前を聞いて自分の夫も姓が「パク」なので、あの刑事さんのような立派な刑事になって欲しいと願って子供につけた名前が「パク・グァンホ」でした。
未来での1988年生まれの本来のグァンホは事件に巻き込まれることもなく立派な刑事として成長することでしょう。
今回出番こそ多くはありませんが、もう1人のグァンホを演じたのはアイドルグループVIXXのリーダーであるエンで、最初はエンのスケジュールが合わず一度は出演を見送ったものの、本人の強い希望で再調整して撮影に臨んだほど思い入れの強い素晴らしい作品になっており、エンのこれからの役者としての活躍が存分に期待できます。
OCNというジャンルドラマに特化した局の作品はいつも続きが気になってしまうドラマが多いのですが、最後まで暗いムードの付きまとう刑事ものもあれば、未来に期待が持てるようなものもあります。
『愛の迷宮~トンネル~』は後者のドラマで、最後は明るい未来しか見えませんが、現代から過去へ戻るグァンホとソンジェの友情の別れには泣いてしまいます。
続編が観たいとは思いますが、これだけハッピーエンドの作品ですから、これで終わっていいのだと思いました。
また殺人事件や凶悪事件が起きてグァンホアッパがタイムスリップしてしまうと、ますますソンジェとジェイの人格形成に問題が起きそうですから。
決して結ばれない運命の男女なんて、一番観たくないですからね。