タイムスリップドラマの人気作『イニョン王妃の男』のスタッフが再び集結して作成し、韓国で空前の大ヒットになったドラマです。
59億ウォンもの製作費をかけ、構想3年に及ぶ緻密なストーリーが他の「タイムスリップ」ドラマとは一線を画した作品となっています。
主人公に実力派俳優イ・ゴヌク、ヒロインに『私に嘘をついてみて』のチョ・ユニ、主人公の少年時代に『花郎』で真興王を演じた“ZE:A”のパク・ヒョンシクという豪華キャストが揃った上に、誰もが見たことのあるベテラン俳優も出演しています。
あの『トッケビ』で一気に人気ケーブル局として知られたtvNが、2013年にこの作品を送り出して放送終了後も"ナインブーム"が続き、社会現象を巻き起こしました。
トッケビ|コンユ&キムゴウン主演!あらすじ・感想・キャスト相関図まとめ
ネパールの海外撮影もあり、エベレストの荘厳で神秘的な雪山風景もこの作品の魅力になっています。
そして何より運命が二転三転していく登場人物たちの姿と意外な展開は最後まで目が離せません。
(画像はhttp://program.tving.com/tvn/9/15/Board/Listより引用)
『ナイン~9回の時間旅行~』あらすじ
パク・ソヌは放送局のニュースキャスター。ある日、彼はネパールで取材中の後輩記者チュ・ミニョンに6カ月だけ結婚しようとプロポーズをするが、その裏にはソヌの切ない秘密が…。ソヌがネパールに来たのは、山で遭難した兄チョンウの遺体を確認するためでもあった。兄が握っていたというお香を遺留品の中に見つけたソヌはそのお香を焚くが、なぜか突然20年前の光景が現れ…。お香がタイムマシンであることを知ったソヌは、兄のメモを頼りに9本のお香を手に入れる。そして、自分とミニョン、家族の人生を変えようと過去に戻るが、その度に“現在”が変わってしまい…。
公式ページより引用
『ナイン~9回の時間旅行~』見どころ
ニュースキャスターでアンカーも務めるパク・ソヌ(イ・ジヌク)はある日ネパールを訪れ、現地に駐在している後輩のチュ・ミニョン(チョ・ユニ)に6ヶ月だけ結婚しようと告白します。
ずっと先輩であるソヌに好意を寄せていたミニョンですが、6ヶ月だけの結婚という条件を訝しみますが、ソヌは「6ヶ月」の意味するところをはぐらかして教えてくれません。
それでも自分が入社してからうるさいくらいにつきまとい、ずっと慕っていたソヌからのプロポーズを受け、幸せの絶頂です。
ソヌがネパールへやってきた最大の目的は、兄チョンウ(チョン・ノミン)と会うことでした。
チョンウは雪深いヒマラヤで遭難して凍死してしまい、春になると地元の川で死体が見つかっていたのです。
兄と最後に会った時に大金を渡し、普段と様子の違っていた兄を止めることができなかった過去の自分を悔やみます。
久々に会う兄の変わり果てた姿を引き取りに来たソヌは、兄が発見された時にお香を握り締めていたことを知らされ、遺品の中に残り9本のお香が入った容器を見つけたことから運命を変える旅に彷徨うことになります。
「6ヶ月」の意味
ネパールから戻ったソヌは何事もなかったかのように普段通りに仕事をこなしますが、兄の遺品であるお香を手に入れたことにより偶然そのお香を焚いた時、お香が燃え尽きる30分の間だけ20年前の過去に戻ることを知ります。
兄はこの時間を戻すことのできるお香を手に入れるべくネパールへ行ったのだと確信するソヌ。
兄の残してくれた9回という限られた時間旅行という中で、ヒマラヤで遭難して死んでしまった兄と20年前に死んでしまった父、父の死により統合失調症を患ってしまったままの母親という現状を打開すべく時間旅行を試みるようになります。
現在のソヌは脳腫瘍が見つかり、自分の余命があと半年しかないことに焦りを感じていたのです。
何度か過去へ行く度に体の不調を訴えるソヌは時間旅行が自分の体を蝕んでいることに気が付きます。
20年前に行って帰って来ると、行く前よりも頭痛や吐き気が酷く、医者であり昔からの友人のヨンフン(イ・スンジュン)にその話をすると、彼はお香のことを過去に行けるプレゼントではなく、呪いだと決めつけますが、ソヌは過去に行くことを止めません。
過去を変える旅へ
20年前に戻ったことにより、ソヌは兄チョンウの人生を全く別のものに変えることに成功しました。
兄は20年前に父が院長をしていた病院の医者となり、家族をもうけて幸せに暮らし、エベレストで凍死するような人生から救い出したものの、ソヌには信じがたい悲劇が待っています。
今までプロポーズまでして恋人だったミニョンの母親がチョンウのと結婚してチュ・ミニョンからパク・ミニョンとして姪になり「叔父さん」と呼ばれる世界が待っていました。
恋人が血の繋がりはないものの、叔父と姪という間柄になってしまうくらい悲しいものはありません。
しかも、ミニョンにはヨンフンの紹介でソジュン(オ・ミンソク)という恋人までいたのです。
自分が兄を助けたために20年後の人間関係は驚くほどに変化していました。
最愛の恋人が姪になり、ショックを隠せないソヌですが、悪いことばかりではありません。
唯一自分が過去を書き換える前の出来事を記憶しているヨンフンが友人としてソヌの脳腫瘍の手術を成功させる術を過去に見出していたのです。
ソヌは一瞬手術により死にかけますが、僅差で過去のヨンフンにより助けられ、死の淵から無事生還を果たします。
兄が助かったのならと、今度は20年前に病院で亡くなった父を助けようとまた過去に戻ることを決意します。
父の死の真相
父の死の原因に現在のミョンセ病院グループの会長で20年前は病院の副院長だったチェ・ジンチョル(チョン・ドンファン)が拘わっているとずっと踏んでいたソヌは父が死亡する直前に戻ります。
ジンチョルはずっと意味深に彼の父を殺したのは自分ではないとをソヌに語っていましたが、ソヌはジンチョルであった証拠を掴もうとします。
30分しか戻れないソヌはテレビ局からカメラを借りて過去に仕掛け、父親殺しの犯人を掴んで父親を助けるために奮闘し、父はその時間には殺されなかったものの、数時間後に殺されてしまい、父まで助けることはできませんでした。
変わったのは父の死亡時間だけです。
そして、父を殺した真犯人が兄のチョンウだということを知り、現代に戻ると楽しく仲間夫婦と食事ていた兄を殴りつけ、会食の場を殺伐とした空気に一変させますが、兄は殴られる心積もりがあったようです。
兄は最初は自首するつもりでしたが、母にやめてくれと懇願され、ジンチョルからも説得されて渡米して医者になりミョンセ病院に帰ってきたのです。
ヒマラヤで凍死した人生とはすっかり別の人生を歩んだチョンウはもう自分の知っていた兄ではありません。
ソヌは「パク・ミニョンをチュ・ミニョンに戻す」決意を固めます。
『ナイン~9回の時間旅行~』キャスト相関図
『ナイン~9回の時間旅行~』感想
お香を使うことで現状が悪くなっていくため、ゴヌは過去にお香を残して消えますが、20年前の自分(パク・ヒョンシク)が警察から指紋が付いていると渡されても覚えがなく、未来から来た自分の物だと感じて未来への自分へのメッセージと共に残していたりと、手放してもお香はソヌのもとへ戻って来ます。
どこまでもソヌに付きまとうお香はヨンフンの言うように「プレゼント」ではなく「呪い」のようです。
韓国ではたくさん描かれている「タイムスリップ」の話ですが、私は過去に戻って自分の人生を変えたいとは思いません。
確かにあの時こうしていれば・・という後悔はありますが、だからといって今の私がいるのは自分の選択の末に選んだ結果なのです。
興味は全くないとは言いませんが、もしある日過去に戻れるお香があったとしても、使わないか、使ってもじっと30分が過ぎるのを隠れて待つだけだと思います。
自分の行動が未来を変える勇気はありません。
自分1人の人生なら構いませんが、他人の未来も変えてしまうなんて怖くてできません。
ソヌは勇気があったのか、無謀な刹那主義者かと疑いますが、彼は未来を良くするために果敢に過去へと拘わります。
過去との邂逅
ヨンフンと教会で祈りをささげていた時に、残り1本となったお香はヨンフンが教会で神に捧げた瞬間に2人の前から消えてしまいます。
ゴヌから時間を超越できる話を聞いたジンチョルが偶然残りの1本を手に入れたことにより、お香に火を付けて過去に行き、当時高校3年生だったゴヌを手下に殺すように言いつけたところでゴヌが慌てて火を消したため、無理やり現在に戻されます。
愛するミニョンを自分の物にするため、過去の自分を助けるために、最大の目的であるチョンウの結婚式を壊して恋人のミニョンを自分の物にすべく、ゴヌは車の中で残された最後の1本のお香に火をつけ、この時間旅行にすべてを賭けます。
過去で高校生だった自分が怪我をする度に自分がまだ殺されていないことを確信し高校3年の頃の自分を助けるゴヌ。
ジンチョルの陰謀が撮影されたテープを2013年の未来に自分の上司であるチョルミン(オム・ヒョソプ)に渡して真実を暴くようにと頼みます。
昔から正義感に燃えていたチョルミンが事実を報道して、ジンチョルは懲役刑、未来のあるチョンウは情状酌量となり、未来はまた別の行方が待っています。
結婚式に現れないソヌ
ソヌの過去でチョンウの結婚式を阻んだ行動により、自殺したチョンウの人生はまた変わります。
現在のチョンウは外国でボランティアとして医療行為を行い、結婚はしていません。
過去でゴヌが宣言した通り、20年前のチョンウの告白により、ジンチョルは逮捕されて病院グループの会長ではなくなり、町の小さな医療機器販売会社の社長となっていましたが、自分の現在の立場に怒りを覚えてゴヌを何とかしようとします。
ミニョンは一番最初の「パク・ミニョン」に戻り、父親は医者のチョンウではなくボストンで暮らす弁護士に戻りました。
ミニョンは自殺したチョンウの葬式の場から自分の結婚式へと変わったことに戸惑いますが、ソヌが過去で何かをしたことは確実に感じています。
父の葬儀の場から一転してウエディングドレス姿になったミニョンは新郎のソヌを待ちわびますが、結婚式が始まる昼になってもソヌは現れません。
20年前の同じ日に結婚式から新郎のチョンウが消えたミニョンの母は、兄弟して同じ日に結婚式場から消えたことに恨み節ばかり訴えますが、ミニョンはソヌに何があったのか気が気でなりません。
一方、20年前の世界にいるソヌは最後のお香が消えても元の世界に戻れないことに愕然とし、お香が自分を嘲笑っていると感じます。
最後のお香は燃え尽きても現在に戻ることができなかったのです。
その上、自分のいる電話ボックスに強い怒りの塊となったジンチョルが車ごと突っ込んできて、瀕死の重傷を負います。
このまま死ぬわけにはいかないと頑張りながら、過去では使用できないスマホにメッセージを吹き込みます。
ソヌの新しい人生
あろうことかソヌは1993年で亡くなってしまいます。
繋がらないスマホにヨンフンへのメッセージを残して2013年から時間を旅してきたソヌの人生は幕を閉じてしまいます。
ソヌは「お香は最後まで俺を嘲笑う」と言うメッセージから始まる5件を残してこと切れます。
2013年にヨンフンは事件の遺留品を受け取りますが、警察の職員が20年前にはあり得ないスマホを何かの間違いだと片付けようとするのを止めてスマホに残されたメッセージを聞きます。
ソヌの最期となる5番目のメッセージにはこうありました。
「お香は俺になった。俺を嘲笑うお香に勝つつもりだ。たが——俺がお香だった。お香を焚いた瞬間から俺が他の人にとって禁断の果実になった」
そして20年前の過去で生きたいと願いながらも死んでしまいますが、20年前にはもう1人のソヌがいます。
2013年から時間を超えたゴヌは不憫な死を遂げますが、今から未来へと繋がるゴヌは現在進行形で生きているのです。
20年後の世界は消え、新しいゴヌの人生が始まります。
そして職場ではチョルミンの部下として働き、ミニョンと出会いゴヌだけの新しい人生を歩きます。
もうゴヌにお香は干渉することはないでしょう。
もし、干渉すればまた別の人生がゴヌに始まり、堂々巡りで2013年から先に行けなくなってしまい、20年という世界から逃げられなくなってしまうのですから。
これからはミニョンと家族となり、報道局員としても幸せに生きていくと思います。
『ナイン~9回の時間旅行~』まとめ
正直、最終的に20年の時間を超えて過去に来たゴヌが死んでしまうという結末に愕然としました。
こんな結末は望んでいなかったのですから。
タイムスリップするからには同じ時代に同じ人物がいては齟齬が生まれてしまうからといって、まさか死んで20年前のゴヌの人生の視点でまた物語がスタートするなんて予想外でしたが、ラスト1話でその後の20年のゴヌの歩みをうまくまとめていて感心しました。
自分がタイムスリップするなんて考えたこともありませんし、奇想天外なSFだけの世界だと思っっています。
けれど、ある日何かのきっかけで過去へ行けると知ったら、あなたはそれを利用しますか?
私は絶対利用できないでしょう。
歴史を変える勇気もなければ、誰かの人生を変えてしまうほど責任は持てません。
過去を変えたいと強く願った人のもとにこのお香は現れ、利用されるのではないでしょうか?!
だからゴヌはお香が嘲笑っていると言ったり、お香は自分だったと言ったのでしょう。
過去を変えたいという弱さに付け込まれてしまったのです。
もし、今自分が間違った選択をしたと悔やんでしまっても、それは本当に間違ったものでしょうか?!
偶然でも必然でも自分が選んだ道です。
胸を張って生きていきましょう。
そうしないとお香でなくても、何かにつけこまれてしまう隙ができて利用されるのではないでしょうか。
自分が生きている証として、過去はあるのです。
何者にもつけこまれることなく正直に自分と向き合うことが大事な事だと思います。