『宮廷女官チャングムの誓い』のイ・ヨンエが13年ぶりのドラマ復帰作となる本作。
『チャングム』の続編を断って、イ・ヨンエはこの作品を選びましたが、画面から感じられる13年ぶりとは思えない彼女の純粋さと透明感は40代後半とはとても思えません。
正しく、苦境を強いられても純粋さを失わない、女性絵師であり、良妻賢母の象徴とされる「申師任堂(シンサイムダン)」として適任と言えるでしょう。
まさしく、この「師任堂」はイ・ヨンエのための作品そのものです。
相手役の宜城君(イ・ギョム)を務めるのは長年韓流スターとして君臨しているイケメン俳優ソン・スンホンです。
意外にもソン・スンホンにとって本格正統派時代劇は今回が初だそうです。
トップ俳優同士の競演がどんなケミストリーを生んでくれるのか、期待に胸が高まります。
(画像はhttp://w-nine.com/より引用)
『師任堂(サイムダン)、色の日記』あらすじ
韓国美術史の教授を目指すジユンは、投資会社を経営する夫と理解のある姑、利発な一人息子ウンスの4人で幸せな毎日を送っていた。ところがそんなある日、世紀の大発見として注目される「金剛山図」の真贋を巡って、ジユンは指導教授ミン・ジョンハクと対立、大学を追われてしまう。失意のジユンを奮い立たせたのは、偶然イタリアで入手した漢文の古い日記だった。そこには若き日のサイムダンの姿と「金剛山図」に関することが綴られていた…。一方、16世紀の朝鮮時代。絵画に並々ならぬ才能を持つ少女サイムダンと芸術を愛する王族の青年イ・ギョムが「金剛山図」を介して出会う。たちまち恋に落ちた2人は結婚を誓うが、ある事件をきっかけに無残にも引き裂かれてしまう。サイムダンが別の男性に嫁いだことを知ったギョムは
茫然自失の果てに各地を放浪する。サイムダンの日記を読み進むうち、発見されたばかりの「金剛山図」が偽作だと確信したジユンは、本物を捜し出してミン教授に挑もうと決心するが…。公式ページより引用
『師任堂(サイムダン)、色の日記』見どころ
この作品は韓国の5万ウォン紙幣の肖像画として有名な「申師任堂」の人生を描いています。
500年の時を超えて現代の母として戦う大学講師ソ・ジユンと、封建社会時代に4人の母として生きる師任堂という同じ顔を持つ2人の女性を通して、女性の強い生き様を教えてくれます。
物語の主格となる謎「金剛山図(クムガンサンド)」
物語の核となって最初から最後まで人々の運命を翻弄するのが、500年前の画家アン・ギョンの描いた「金剛山図」です。
15世紀を代表する宮中行事や王の真影を描く画家として活躍した安堅(アン・ギョン)。
実在した画家ですが、現存するのは「夢遊桃源図巻」という安平大君が夢で見た桃源郷を、わずか3日で描いたといわれる絵だけです。
この「金剛山図」の出現により、本当にアン・ギョンの手によるものなのかという美術史をも揺るがす大問題に、現代の人々の思惑が交差し合い、お互いをけん制し合います。
師任堂と「金剛山図」
少女だった師任堂はアン・ギョンの金剛山図があると聞きつけ、近所の屋敷の塀を超えて見に行こうとします。
しかし、屋敷の親戚である王族のイ・ギョムに見つかってしまいます。
ずば抜けた絵の才能を持つ師任堂は、アン・ギョンの絵を見ることを熱望します。
史実にも、師任堂がアン・ギョンの絵を参考に勉強したという逸話があります(それが「金剛山図」なのかは不明ですが)。
アン・ギョンの絵を参考にしても、なかなか思う絵の具の色が作れない師任堂に、ギョムは色の作り方を教えたりしているうちに、同じ時間を長く過ごしている若い2人には自然と恋が芽生えます。
師任堂は「いつか金剛山に上りたい」と切望しますが、そこは女人禁制の山です。
しかし、ギョムは彼女に約束します「一緒になって2人で金剛山に上って絵を描こう。他の誰でもなく、私と一緒に」と。
かくして、ギョムは師任堂の両親に結婚を申し込むのですが━━。
美術講師ジユンと「金剛山図」
美術講師として日々、教授になることを夢見てがむしゃらにひた走るソ・ジユン(イ・ヨンエ)は教授のミン・ジョンハク(チェ・ジョンファン)の望むことはすべて従ってきました。
けれど、ミン教授がアン・ギョンの「金剛山図」を本物だとして発表することに、ジユンの中では真贋の区別の不安が払拭できませんでした。
それがミン教授にばれてしまい、イタリアの学会に出席した際に、ミン教授からの信頼を一切なくしてしまいます。
美術教授の夢はおろか、講師としての資格も失い、最終的には学位さえもミン教授の巧妙な作戦により奪われてしまいます。
ミン教授の下を離れ、イタリアの市場のおじさんから一冊の古い本を渡された瞬間から、ジユンの運命の歯車が音を立てて動き出します。
「金剛山図」の謎解きがここから始まり、そしてジユンと師任堂の運命が重なり合います。
美しい自然と、絵画の融合
このドラマは風景と美しい絵画の織りなす世界観がとても美しい作品です。
イタリア・トスカーナや、韓国の金剛山などの景色の美しさ、それを写実する師任堂と宜城君(ウィソングン:イ・ギョムのこと)の絵画の素晴らしさです。
自然を忠実に再現する能力を持つ500年前の絵師の2人の才能と、それを見ることができる目の確かさをドラマを通して感じられます。
韓国の最高の美術スタッフを集結させ作り上げた映像美は、観る者すべてに感動と運命の切なさを感じさせてくれます。
ジユンと師任堂の生き様
500年前の師任堂と、現代のジユンをイ・ヨンエが1人で演じています。
時代と生き方は違っていても、母として妻として、1人の女性として家族を守ろうと必死に生きる姿はどの時代のどの女性でも共通ではないでしょうか。
彼女たちが特別な訳ではありません。
ただ、道が閉ざされようとしても、逃げずに目をそらさず、母として家族を守るため、目の前の難問をかいくぐって自分の力でできることを見つけ、行動して生きていくだけです。
ジユンの選んだ道
イタリアでもらった古い本、その古書の出所であるトスカーナの「シェスタ デ ルナ(月の昼寝)」という建物を訪れて、自分と同じ顔をした古い韓国の美人図を発見します。
その建物は不思議な建物で、過去と現実がない交ぜになっているかのような錯覚を視聴者に与えます。
韓服(ハンボク)を着たソン・スンホンが現れたりと、その場所は何かの次元のトンネルのような空間です。
韓国へ帰ると、大学から自分の居場所を奪われたことを知るジユンは、悲嘆に暮れます。
しかし、古書は「師任堂」の「寿進坊(スジンバン)日記」だということがわかります。
同時にトスカーナで手に入れた美人図は「師任堂」の姿であり、描いたのは宜城君であるということが徐々に明らかになっていきます。
そして、美人図の中からアン・ギョンの本物の「金剛山図」が見つかり、ミン教授に贋作の「金剛山図」を国宝とさせないために奮闘します。
今世に出ているアン・ギョンの「金剛山図」を巡る金銭の動きと共にジユンの夫(イ・ヘヨン)は詐欺の疑いで指名手配され、逃げる途中で事故に遭い、行方が分からなくなってしまいます。
家を手放し、義母と息子のウンスを連れて大学を追われた後は、今度は夫の借金取りからも追われ、治安のいいとは言えない場所に家を借りるしかなく、みじめな思いに苛まれるジユンですが「寿進坊日記」の解読と本物の「金剛山図」の発見により、もう一度美術界へ返り咲こうとふつふつと心の底では野望が滾ります。
師任堂の選んだ道
宜城君と結婚するとばかり思っていた師任堂ですが、当時の王・中宗(チェ・ジョンファン)の思惑により、ギョムとの結婚は許されませんでした。
そればかりか、中宗によりクーデターとして師任堂の父(チェ・イルファ)は殺されてしまい、師任堂は泣く泣く彼女を慕うイ・ウォンスと結婚するしかありませんでした。
そして時は流れ20年後、4人の子供をもうけ、幸せに暮らしていると思えば、そうではなく故郷から漢陽(ハニャン:現在のソウル)に出てくるも、住む家はあばら家の有様です。
隣家はオバケがでると言う噂のある家でしたが、なんと住んでいたのはドラマ『7日の王妃』の廃妃にされた端敬王后でした。
実は師任堂の夫ウォンス(ユン・ダフン)は典型的なダメ男で、科挙の試験にはずっと落ち続け、寺籠りをしても勉強しない、おかげで故郷の家を売り払う羽目になっても、妻に頼り切り。
後には、クッパ屋の女将と良い仲になり、妊娠させてしまうという不届きものです。
優しいだけが唯一の救いですが、現代ではこれを「ヒモ」と呼ぶ、そんな亭主です。
息子のヒョルリョンはとても頭が良いのに、お金がなくて学校に通わせられない。
その時は、師任堂が少女の頃悲劇の場に立ち会ったという酷い記憶はあるものの、雲平寺で紙を作っていたことを思いつき、本物の朝鮮紙を作ってお金を稼ぐ発想をします。
それは長い目で見れば成功しますが、成功するまでには紆余曲折の困難が待っています。
娘のメチャンは母親譲りの絵の才能がありますが、ある日王の御真影を書く絵師になりたいと志願します。
しかし、一次審査を絵画の主席として通るものの、女と言うことがバレて悔しい思いを味わいます。
どうして、女はだめなのか、と泣き喚きます。
そんな娘の為に母は制約の取り払われた御真影の画員となるべく絵を提出して、女性でありながらも見事に画員に選ばれ、娘の希望を取り戻し、女性でも絵が描ける世の中を自ら証明させます。
『師任堂(サイムダン)、色の日記』キャスト相関図
『師任堂(サイムダン)、色の日記』感想
500年前と現在をリンクさせながらの話は、タイムスリップものではよくありますが、これは全く違います。
過去と現在を交互に織り交ぜながら、「金剛山図」の謎の解明と、現代と昔の女性の、時代は違えども、女性として、母としての強さを見せつけられる作品です。
個人的には、現代の話が短くて、現代の話がもっと長ければ謎解きもずっと楽しめたのだと思いますが、あくまでも主役は「師任堂」ですから、過去の話が中心になってしまいます。
500年前も現代も同じ顔をした女性が、形はどうであれ、亭主に苦しめられ、そこから家族を女手一つで守っていく姿には見習わなければと思いました。
高潔な女性「師任堂」の姿
師任堂は子供をただ叱るだけではなく、どうしてそういうことになったのかを考えさせて、子供なりに理解させようとします。
漢陽のあばら家が自分たちの家と認めたくない子供たちにも、無理強いすることは決してありません。
どうしたら自分たちの過ごしやすい家になるかを考えさせ、自然に触れさせて、風や草木や生き物の息吹を感じさせます。
そうして、自然の雄大さと偉大さ、その中で生きている私たちも同じなのだと常に諭してきました。
こんなすばらしいお母さん、いいですよね。
ただ叱られるだけでは、感受性の強い子供時代に何も得られないでしょう。
長男が「弟は頭が良く、妹は絵が上手いが、自分には何の才能もない。けれど、鍛冶をすることに興味があるので、鍛冶師なりたい」と打ち明けた時も、微笑んで「あなたが興味があればしなさい」と許します。
鍛冶師は、刀類を作る職人ですから、火傷や怪我の心配に重労働と高熱という環境です。
それでも、息子を案じる不安げな表情は一切見せず笑って許すのですから、本当にできた母親だと思います。
また、娘メチャンが絵師になりたいと男装して絵の試験に臨んだ時には、師任堂の苗字が「シン」なので、もしやドラマ『風の絵師』や映画『美人図』に出てきた、画家シン・ユンボクが実は女性だったという話に繋がるのでは?!と期待したのですが、そんな展開はありませんでした(笑)。
序盤とラストの伏線
この作品は44話と、普段20話くらいのドラマばかりを見ている私には長い作品でしたが、見ごたえが凄くあります。
韓国での視聴率は不調だったようで2話ほど話数を減らしたらしいのですが、海外での評価は概ね高く、やはり国民性の違いなのでしょうか!?
特に最初とラストのトスカーナ地方は風景も、描写も素晴らしいものです。
現代での大団円
アン・ギョンの贋作と真作の真相が追及され、敵対していた美術館の女性館長(キム・ミギョン)がジユンに「今は良くても、未来には貴方たちは悪者になる」という発言に心を入れ替え、すべてを暴いてくれるあたりは気持ちよかったですね。
今までさんざんジユンたちの邪魔をしたミン教授がおちぶれる様は胸のつかえが一気に取れたような気がしました。
また、500年前のラスト近くで宜城君が王から「タムナ」への流刑を言い渡されますが、「タムナ」は現在の済州島のことです。
今のリゾート地が昔の罪人の行きつく先だなんて、考えられませんよね。
そして、館長を演じるキム・ミギョンは昔ドラマ『タムナ~Love the Island』で主人公の母親役としてタムナで海女として暮らしていた役をしていて、思わず懐かしく思ってしまいました。
館長が自分たち夫婦の破滅になるとわかっていても、自分の間違いを認め、夫の不正を暴露してジユンの夫を容疑者から被害者へと変える発言をします。
行方不明だったジユンの夫も無事に戻り、家族として幸せな時間をやっと持つことができます。
ジユンと同じくミン教授に迫害されたへジョン(パク・ジュンミョン)やサンヒョン(ヤン・セジョン)も美術の道に返ることができ、それぞれの道を歩き始めます。
そして、ジユンはまたイタリア・トスカーナを再訪して、今までの長かった出来事に感慨にふけるのです・・。
500年の時を超えて
20年の月日が流れて再開した宜城君と師任堂ですが、彼女は恋心よりも母として生きることを選びました。
若い頃あれだけ真摯に互いを想い合った2人ですが、決して結ばれることはありませんでした。
500年前にトスカーナへ渡った宜城君の「想い」だけが、ずっと彼の暮らした「シェスタ デ ルナ」に残り続けています。
そして、一度夢幻の空間で師任堂に会ったジユンを通して、彼女の再訪したトスカーナで2人は出会います。
現世では決して結ばれなかった2人が、500年の時を経てイタリアで結ばれるという、壮大な初恋の物語が終焉します。
最後の2人のシルエットは幸せそうで、やっと師任堂は一番愛する人と一緒になれたと、胸が熱くなりました。
それが肉体を伴わない「想い」という概念で昇華されるなんて、本当に2人は運命で結ばれていたのに、時代や政治的な欲望が邪魔をしたのだなと、ちょっと悲しくもなりました。
500年の時を経ても、思い慕える人がいるというのは本当に素晴らしいですね。
謎の美術家「ラド」とは?
ドラマ内の謎は、現代と500年前の殆どの主要人物がダブルキャストとして登場することです。
そこがまたどういう展開を生むのかと、ワクワクしながら観ることができます。
しかし、一番の謎は美術界を揺るがす真贋の持ち主「ラド」の存在です。
今まで様々な世に出た美術品の贋作を見破ってきた、美術界には驚異の人物です。
決して表だったことはしませんが、「金剛山図」に間違い探しをしかけたり、ジユンにルーベンスの「韓服を着た男」を送りつけたりと、謎ばかりです。
後に、ジユンは「ラド」と会い、それが集団の組織名で1人ではないということを知ります。
そしてラストでジユンは、「ラド」の構成員の1人になったかのような行動をしています。
美術教授を諦めざるをえなかったジユンに開かれた道は「ラド」の一員として美術の発展に寄与する、真贋を見抜く仕事です。
「ラド」のボスに招待され、「シェスタ デ ルナ」を訪れた先にはボスらしきソン・スンホンの姿が・・。
最後になってやっと現代でのソン・スンホンの登場です。
最終回で2人は確固たる出会いを迎えてはいませんが、過去の宜城君と師任堂のように、同じ道を目指して、美術界を牽引していくのでしょう。
過去の2人は「魂」や「想い」として昇華したのですから、これからはジユンだけの物語です。
今度は初恋相手ではなく、仕事のパートナーとして2人は後世に名を残すような大業を遂げるのではないでしょうか?!
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師任堂(サイムダン)色の日記|日本語字幕フル動画を今すぐ安全に無料視聴する方法《韓国ドラマ》感想・見どころも
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