『猟奇的な彼女』チャ・テヒョンとドラマ『雲が描いた月明かり』で子役から女優となったキム・ユジョンの織りなすファンタジックラブコメディーです。
親しみやすさが魅力の俳優チャ・テヒョン演じる主人公が、プロポーズしようとうきうきした気分のまま「愛してるから」という歌を聴きながら婚約指輪を忘れた事を思い出し、Uターンしようとして交通事故に遭ってしまい、いろいろな人の体に入っては他人の人生を経験し、幸せにしてあげる心温まるストーリーです。
1987年11月1日に事故のため無くなったユ・ジュハの『愛しているから』という曲を題材に、愛に素直になれない人たちへのメッセージとして、主人公が他人に憑依して「愛しているから」というそれぞれの気持ちを伝えていく珠玉のヒーリング映画です。
(画像はhttp://www.cgv.co.kr/movies/detail-view/default.aspx?midx=79249より引用)
『大好きだから』あらすじ
イヒョンは愛する女性へのプロポーズを決めた日に、事故で重体に陥ってしまう。
昏睡状態から目覚めた彼は記憶を全て失っており、他人の肉体に乗り移る不思議な力を手に入れていた。
その秘密を女子高生スカリーに知られたイヒョンは、彼女の助けを借りて元の自分を探すことに。
予期せぬ妊娠をした学生や離婚の危機に陥った刑事、認知症の老婦人など、それぞれ問題を抱える人々の身体から身体へと乗り移りながら、彼らの壊れかけた心を癒やしていくが……。映画.comより引用
『大好きだから』見どころ
最愛の女性へプロポーズを決意して浮かれた気分のままで事故に遭ってしまったイヒョン(チャ・テヒョン)は、気が付くと自分のことがまったくわかりません。
記憶喪失なのですが、女子高生の体に違和感を覚えます。
自分が男という自覚はあるものの、何故女子高生になっているのか、自分が誰なのかもわからず混乱しています。
そんな時出会ったのは、スカリーと名乗るチャン・スイ(キム・ユジョン)という女子高生でした。
彼は彼女の力を借りて色々な体に入っては、愛情のメッセンジャーとして渡り歩いていき、意識しないままに人々に愛情を与えていきます。
女子高生になったオレ
学年1位の優等生「キム・マリ」
ベッドの上で目覚めたイヒョンはなんと女子高生として保健室で寝ていたのです。
しかも鏡には見ず知らずの女子高生の姿がありますが、自分が女という自覚はありません。
寧ろ、男であると思ってはいますが、記憶障害により自分が誰なのか全くわかりません。
自分が男か女もわからないけれど、女子高生ではないとは感じます。
周りの教師たちは優等生のマリ(キム・ユネ)が受験のストレスのために一時的におかしくなったと納得しますが、見た目はヒョンギョンでも中身は記憶喪失の男性です。
スカリーと名乗る女子高生に会って助けを求めますが、なんと自分の憑依した女子高生は優等生なのに妊娠しているようなのです。
父親である相手の男子生徒に出会いますが、男の自分の意識がある状態で、このまま出産させてはならないとイヒョンは奮闘し、子どもを中絶する決意をしますが・・。
刑事になったオレ
離婚寸前の刑事「パク刑事」
耳鳴りがして気付くとおじさんに変わっています。
パク刑事(ソン・ドンイル)は安月給で離婚寸前という風采の上がらない男です。
そんなパクが妻に手錠をかけられて離婚調停のために裁判所に向かっている時にアクシデントが発生します。
なんと2人はマンホールの穴から落下してしまったのです。
助けを呼ぼうとするにも術がなく、妻から責められるのすが、次第に妻の様子がおかしいことに気付いて必死に妻を助けようと妻を背負ってイヒョンは下水道を歩き始めます━━。
教師になったオレ
モテないスイの担任教師アン
次に入った体はスカリーことスイの担任教師アン(ぺ・ソンウ)で、スイが産婦人科に行ったことを責めますが、そこで自分だと告げてスイを安心させます。
担任は地味で真面目なモテない男性ですが、ある日大学の後輩女性から会いたいと連絡が入ります。
後輩女性は美しく、担任の家に押しかけて一緒に酒を飲んで迫り、イヒョンとしては前世でどんないい行いをしたんだろうとその後の展開にほくほくしています。
実は彼女は学校教材の販売をしていて、自分の営業に協力させようと色仕掛けをしていたのです。
それを知ったイヒョンは教師に同情しますが・・。
老婆になったオレ
認知症で施設にいる老婦人「ガプスン」
今度は認知症の老婆(ソヌ・ヨンニョ)になっていますが、認知症が幸いしてイヒョンが変な言動をしても誰も不思議がりません。
いつも世話をやいてくれるチュノ(パク・クニョン)という紳士的な老人がガプスンという名前を教えてくれました。
チュノはガプスンの初恋の人らしいのですが、彼の世話は小さな子供を世話する親のように甲斐甲斐しくて、見ていて胸が痛くなるほどです。
スイからイヒョンの体を見つけたと教えてもらい、いてもたってもいられずにチュノにお願いして車を出してもらいますが、高齢のチュノは病に侵されていたのです。
自分の体に辿り着く前にチュノを病院に運び入れたことから、チュノとガプスンの本当の関係を知って愕然とします。
認知症という病気のせいで彼がガプスンにとってどういう存在であったか忘れてしまっていたのです。
イヒョンはガプスンとして身なりを整えて、彼の病室に向かいます━━。
『大好きだから』感想
30年以上前に志半ばで若くして交通事故で亡くなったユ・ジェハのメロディーと共に流れる物語は切なさがあります。
この作品は2017年の公開なので、彼の没後30周年ということで、彼の追憶作品だと思います。
イヒョンの蘇る記憶の中の想い出と、その時に最愛の人が愛して奏でたジェハの曲、その時のストーリーが温かくも繊細で涙が自然と出てきます。
それぞれ4つの物語に笑ったり泣いたりして、最後は絶対に心が温かくなります。
そして、5番目のイヒョン自身の物語ですべてが浄化されるような気がします。
最初の笑いはイヒョンの制服姿!!
チャ・テヒョンの女子高生の制服姿には爆笑しました。
制服はパッツンパッツンでちょっと前屈みになれば背中が見えますし、顔がチャ・テヒョンのままでタイトスカートなのも、歩く姿ががに股なのも笑えます。
自分の心が見せている姿なのでしょうが、これだけ似合わないのにきちんと制服を着ていて、さすが俳優だな~と感心しました。
また、最初に自分が誰かの体に入ったのが女子高生だったという面白さも、イヒョンの動揺が激しくて笑えます。
これがおじさんだったらここまでの動揺はなかったと思います。
占い師(チャン・ヒョク)に占ってもらい解決しようとして匙を投げらりたりとか、どうして占いに頼ろうと思ったのでしょう?!
このあたりは女子的発想としか思えませんが、それだけ藁にもすがりたいという思いの表れでしょう。
女子高生だったからこそスイと出会えて助けてもらうこともできたのでしょう。
イヒョンの身元判明
イヒョンは事故の際に昏睡状態に陥ってしまったことから、魂が彷徨い色々な人の体に入っていたのでした。
自分の姿に愕然としますが、今度は仕事仲間のチャンヨン(イム・ジュファン)の体に入り、愛するヒョンギョン(ソ・ユジョン)のために奮闘します。
イヒョンは天才作曲家として名が知られていたのですが、「舞台恐怖症」に悩むヒョンギョンのために何度もオーディションを勧めていました。
しかし、いつも彼女はユ・ジェハの曲を弾こうとしても緊張のあまりギターを爪弾く手が止まって、満足に合格することができません。
恐怖症に怯える彼女に、次は自分が審査員をするオーディションに出て、楽器は自分が演奏するから歌に集中しろと進言していたのですが、自分がこんな状態では楽器の演奏なんてできません。
チャンヨンとしてオーディションでピアノを弾くと約束します。
オーディションの日は訪れ、会場には2人を見つめるスイの姿もあります。
彼女が選曲したのはユ・ジェハの「愛しているから」です。
緊張して歌えないヒョンギョンが振り向くと、ピアノの前にいるのはチャンヨンではなくイヒョンでした。
ヒョンギョンは彼の顔を見て安心して歌い出しますが、その時病院のベッドで横たわっているイヒョンの心拍数を計る機械が反応を停止します。
イヒョンの心臓が止まってしまったのです。
ヒョンギョンはオーディションに合格し、希望の歌手デビューを果たします。
それぞれの幸せが集まって・・・
イヒョンが体に入り込んだ人たちは、全員、彼の事故現場の目撃者でした。
唯一チャンヨンだけは事故現場にいなかったのですが、それはヒョンギョンへの愛のために彼の体がどうしても必要だったのです。
偶然とはいえ彼の事故現場を見たからこそ、ユ・ジェハの曲と共にイヒョンはメッセンジャーとなり縺れた糸をほどいていき、愛を紡いでいった神様からのプレゼントだったのです。
- マリは無事に彼氏ヨセブと結ばれて出産し、ソウル大に合格して幸せな日々を送っています。
- パク刑事は妻の閉所恐怖症により優しさと愛を確認して無事にマンホールから助けられ、今は娘と3人で家族仲良く暮らしています。
- 担任アンと後輩ダインはそのまま交際に発展し、今やラブラブカップルです。
- チュノが初恋の相手ではなく夫だとガプスンは微笑んで応え、死ぬまでに自分を夫と認めてもらいたかった彼は満足して天国へと旅立ち、今は家族と幸せに暮らすガプスン。
この面々が新鋭歌手として羽ばたくヒョンギョンのコンサートに集まっています。
ヒョンギョンがイヒョン作詞作曲だと発言して歌を歌い始めます。
会場にスイが座っていると、遅れてイヒョンも現れて彼女の隣に座り、満足そうに彼女の歌に聞きほれます。
心停止したと思っていたイヒョンは死んでおらず、無事にヒョンギョンと新しい道を進んでいるようです。
事故により彼に起こった出来事のすべては、拘わった人全員が幸せになるために起こった奇跡だったのです。
『大好きだから』まとめ
なぜ日本のタイトルが『大好きだから』になったのか悩むところで、ユ・ジェハの曲名『愛しているから』の方がしっくりくるような気がします。
日本人には「愛」よりも「好き」の方が馴染みがあったり、言いやすいからでしょうか?!
イヒョンがメッセンジャーとしてそれぞれの「愛」の想いを相手に伝えて幸せにしてあげる様子にはこちらまで幸せになります。
自分も誰かの愛を伝えられることが出来たらどんなにいいかと考えてしまいます。
でも、誰かの前に自分が素直になれないのですから、まずは自分が素直になって相手に「好き」を伝えていかなくてはならりませんね。
それは恋人でなくても、両親だったり兄弟だったり、友達だったりしても同じことです。
「大好きだから」と言えることが大事なのですね。
そして、素直になれない愛情を持った人がいたら、そっと言えるように促すメッセンジャーになりたいものです。