韓国トップ俳優のヒョンビンが初の詐欺師役で登場する映画『スウィンダラーズ』。
ヒョンビンといえば『コンフィデンシャル/共助』で北朝鮮の敏腕刑事を見事に演じ切った実力で、今回の映画も楽しませてくれる期待を抱かせます。
詐欺師が復讐のために死亡したとされる稀代の詐欺師を捕まえようと検事と手を組むという荒唐無稽のストーリーですが、実はこの映画は実際に起きた史上最大のマルチ商法詐欺をモチーフにしています。
詐欺師に与する検事を『オールドボーイ』のユ・ジテが演じて、何がリアルで何がスウィンドル(人を騙すこと)なのか分からなくなってきます。
最後まで現実と虚構の世界に惑わされること間違いありません。
最高のケイパームービー(特技を持った仲間で犯罪をする映画)作品となっています。
(画像はhttps://news.joins.com/article/22103937より引用)
『スウィンダラーズ』あらすじ
韓国を驚かせた希代の詐欺師チャン・ドゥチルが死亡したというニュースが発表される。しかし、詐欺師だけをダマす詐欺師ジソンは、チャン・ドゥチルがまだ生きていると確信し、事件の担当検事パク・ヒスに、彼を捕まえようと提案する。パク検事の非公式捜査ルートである詐欺師3人組コ・ソクトン、チュンジャ、キム課長も合流して、行方をくらましたチャン・ドゥチルの側近クァク・スンゴンに接近するため、新しい作戦を立て始める。しかし、パク検事はチャン・ドゥチル検挙ではなく、別の目的のためにひそかに違う作戦を立てていた。これに気づいたジソンと他の詐欺師たちも互いにダマされないため、それぞれの計画を立て始めるが…。
公式ページより引用
『スウィンダラーズ』見どころ
詐欺師専門の詐欺師として有名なファン・ジソン(ヒョンビン)は天才的な変装能力の持ち主です。
彼が詐欺をする時は完璧な変装で誰にも気付かれることがありません。
知能型の詐欺で汚い手を使う詐欺師をどんどんと懲らしめていきます。
そんな彼に目を付けたのが詐欺集団のボスであり特別捜査本部のエリート検事であるパク・ヒス(ユ・ジテ)です。
彼の元にはベテラン詐欺師のコクトン(ペ・ソンウ)、美人局のチュンジャ(ナナ)、天才ハッカーのキム(アン・セハ)が集まり、ジソンと出会うことで死亡したと言われている稀代の詐欺師チャン・ドゥチルを罠に嵌めようと計画を練ります。
最初はジソンに騙されたことのあるコクトンは彼と一緒に仕事することを拒みますが、知能型詐欺師であるジソンの能力の高さに惚れ込んでいきます。
実際にあった「チョ・ヒパル詐欺事件」
韓国で実際に「稀代の詐欺師」と呼ばれたチョ・ヒパルは警察が2012年に死亡を発表したものの、その後も捜査が続いていることが明らかになります。
彼は10を超える会社を所有し、医療器レンタル詐欺で4万人の投資者から4兆ウォン(約400億円)を騙し取り、これにより自殺した被害者は30人に及ぶという、韓国史上最大級の高額詐欺事件を起こしました。
警察からの死亡が発表されるも、2015年10月にチョの右腕と謳われたカン・テヨンが中国で不法滞留の容疑で逮捕され、韓国へと強制送還されました。
そのためヒパルの生存がまことしやかに囁かれ、彼の姿を見たという数々の証言が飛び出し、彼の死が偽りだったことが発覚したという事件です。
この物語を忠実に再現しつつも、娯楽大作に仕上げたのが本作『スウィンダラーズ』です。
チョ・ヒパルをモデルにしたイ・ビョンホン主演の映画『マスター』もあるので、そちらも観てみたくなりますよね。
ジソンの復讐
ジソンの父親は昔は詐欺で稼いでいましたが、今は足を洗って細々と生活しています。
そんな父の元へある日腕を買ってパスポートの偽造を頼んでくる人物がいました。
仕方なく父は偽造パスポートを作成して持っていくも、そのまま息子の元に帰ることはなく殺されてしまいます。
秘密を知った父親は口を開かないために処分されてしまったのです。
偽造パスポートの相手がチャン・ドゥチルと知っていたジソンは彼を追って中国領へと渡航します。
父の復讐を胸に熱く滾らせて。
ドゥチルの右腕クァク・スンゴン
スウィンダラーズたちが目を付けたのが、ドゥチルの右腕と言われるクァク・スンゴン(パク・ソンウン)です。
右腕と言われるだけに敏腕ですが、どこか少し抜けているところがあります。
美人局のチュンジャの罠にはまりまくりです。
チームワークでスンゴンを手玉に取るチュンジャ役のナナはガールズグループ”AFTERSCHOOL”のメンバーですが、表情や身のこなしや口調まで本物の美人局のようで、美貌に加えて演技力まで身につけて、これからの女優人生が楽しみです。
ジソンからの偽の儲け話に引っ掛からない強い精神力を見せてくれたスンゴンも女性からの誘惑には勝てないただのおじ様になり果ててしまいます。
スウィンダラーズの特技
何と言ってもヒョンビンの変装メイクに感心します。
年齢も身長さえも別人に見えるような完璧な変装です。
顔からベリベリと特殊メイクをはがす姿はアニメのルパン三世そのものの変装です。
ペ・ソンウ演じるコクトンは一見チンピラのようないでたちですが、演技が天才的なプロの詐欺師ですし、ナナ扮するチュンジャの色気はただものではなく、稀代の悪女と言っても過言ではありません。
アン・セハ演じるハッカーはシナリオにはなかったキャラクターとして皆を裏で支えるなんでも屋を熟しています。
スウィンダラーズたちの指揮を執る検事役のユ・ジテの圧力がとんでもありません。
絶対にこの人は悪い人だと思わせる眼鏡の奥からの目つきの迫力、実際に仲間のふりをした裏切り者なのですが、それは誰の目から見ても明らかでしょう。
誰が騙して誰が騙されるのか、仲間内の本当の裏切り者は誰なのか、最後まで予測不能のケイパームービーにやられる人が続出必至です。
『スウィンダラーズ』感想
ところどころ話に無理やり感がありますが、ノリとスピーディーさで最後まで楽しめます。
誰が騙されるって、一番騙されるのは視聴者だと思います。
どんでん返しのまた裏の裏をかかれるという最後まで観ていて飽きるところがありません。
寧ろどんな展開が待ち受けているのか期待してしまいますが、決してその期待は裏切られることはありません。
まさかの復讐の真犯人
ジソンの父を殺したのはあろうことか検事のパク・ヒスでした。
ドゥチルの指示で仕方なくとはいえ、司法に従うべきはずの検事が偽造パスポートを作った口封じのために殺してしまっていたのです。
今も昔も検察という狭い社会の中で、出世を糧として膿のように生きているヒスの姿は最悪の司法を纏った姿でしかありません。
今でも詐欺集団の一味として頂点でのさばり、あろうことかその仲間さえも捨てようとしているヒスは集団の中では一番の敵です。
それをいち早く察知したジソンは自らヒスを裏切る作戦を実行しますが、そこには今思いついた作戦ではなく、用意周到に何年も前から企んでいた作戦でした。
予想外の結末に爽快!!
ヒスの裏切りを感付いた仲間の詐欺師たちは自分たちをも騙すふりをしてヒスを裏切ります。
表面上からは一切先が読めない、お互いの腹の探り合いがこの舞台の一番の盛り上がりとなります。
最後の展開で絶対に視聴者は驚愕する筈です。
どんなミステリーや謎解きが好きな方でもそこまでは予想できなかったという結末にしてやられる筈です。
ここまで視聴者を最後の最後まで騙す映画ですが、騙された不快感はなく、むしろ大笑いしたくなるほどの爽快さを感じられます。
『スウィンダラーズ』まとめ
実際の事件をモチーフにしただけに、ただのフィクションでは味わえない緊張感と面白さが溢れる作品になっています。
未だに謎の「チョ・ヒパル詐欺事件」で実際にあった警官と世紀の詐欺師の癒着による逃亡をこの作品では、ドゥチルと警察官僚トップの繋がりにより逃亡を手伝い、検事のヒスが主人公の父親殺害という悲劇的な要素を盛り込んだ娯楽大作になっています。
すべてを白日の下に曝そうとするジソンと被害者たちの思いがひとひと感じられるようなドラマティックなラストの騙し方までのスピード感は映画ならではです。
ヒスを陥れるために何年もかかって仕込まれた騙しのプロのテクニックには感服します。
この物語ではドゥチルを罠に嵌めるのではなく、ジソンと被害者がヒスを追い詰めるために罠にかける見事な手口がまた私たち視聴者をいい意味で裏切ってくれました。
本当の敵はドゥチルではなく味方だったなんて、いくら頭のいい検事でも知能犯のジソンには勝てなかったのです。
ジソンもヒスを罠にかけたことにより刑務所へ入ることになりますが、出所してからは仲間たちと今度こそ「チャン・ドゥチル」を罠に嵌めようと息巻きます。
それが騙しのプロである詐欺師としての仕事であっても、次への希望や目標があれば人間は頑張って行けると思います。
まだ本当の敵は逃亡しています。
いつかジソンたちスウィンダラーズがまた詐欺師という能力を全開にして正義を取り返してくれることを願うばかりです。