2006年に韓国で公開された、キム・ナムギルがまだ無名俳優で芸名がイ・ハン時代の作品です。
韓国で初めて同性愛者としてカミングアウトしたイソン・ヒイル監督が「同性愛」を飾ることなく正直に描いた衝撃作として話題になりました。
この作品に出演した為、一時期キム・ナムギルは同性愛者ではないかと疑われたこともありましたが、彼曰く「他にやる役者がいないから出演した」とのことです。
確かに、自身がストレートならば同性愛者の役はちょっと抵抗があるかもしれませんね。
これを踏み台にしてから芸名を本名に戻した後の活躍は凄まじく、キム・ナムギルは今や日本でも人気のあるトップスターへと躍進しました。
(画像はhttp://www.cine21.com/news/view/?mag_id=42644より引用)
『後悔なんてしない』あらすじ
孤児院を出て工場でアルバイトをするスミン(イ・ヨンフン)に、初めて出会ったときから惹(ひ)かれていた工場の経営者一族の御曹司ジェミン(イ・ハン)。しかし、工場をクビになりゲイ・バーで働くことになった経緯から、スミンはジェミンの気持ちを受け入れられなかった。そんなスミンも少しずつ、ジェミンのまっすぐな愛情に心を開いていく。
シネマトゥデイより引用
『後悔なんてしない』見どころ
孤児院育ちのスミン(イ・ヨンフン)と、御曹司のお坊ちゃまジェミン(イ・ハン)の胸が塞がれるような切なく激しい愛を描いた同性愛の物語です。
男性同士の激しい愛情表現のシーンもありますが、2人の愛情の疎通がとても微笑ましく思えます。
最悪の出会い
田舎の孤児院で育ったスミンは就職の為にソウルという都会に単身上京します。
工場へ勤務し、夜は運転代行も行い、爪に火をともすような生活の中で大学進学を夢見て勉強を頑張っています。
ある晩客として乗せた男性に部屋へ誘われますが、最初は一目でお互いに好意を持っていただけに、スミンは自分のプライドが傷ついて怒って帰ってしまいます。
そして工場では人員整理があり、クビになる人員の中に自分が入っていることを知り、悲嘆に暮れますが、工場を訪れた社長の息子がスミンの顔を見て、スミンのクビを取り消します。
社長の息子こそ部屋へ誘ったジェミンでした。
クビを免れたものの、他の1人がクビになることを知ったスミンはジェミンに怒り、せっかく残れることになった工場を辞めてしまいます。
工場勤務を辞め、仕事を探すスミンはレストランで皿洗いなどをしていますが、なかなか収入に繋がらず、勉強もできない為、他の仕事を探し、ボーイという男娼の仕事を紹介されます。
もともと同性愛の自覚があったスミンはこの仕事を続けますが、またジェミンがここにも現れます。
最初は仕方なく客としてベッドを共にするスミンですが、それ以降は客として来てもジェミンを拒みます。
愛し合う2人
しつこく店に来て追い払われるジェミンは、とうとう店の従業員に足蹴にされ、ボコボコにされます。
さすがに可哀そうに思ったのか、彼を助けたスミンですが、ジェミンへの拒否する態度は頑なです。
この時スミンに向かって放ったジェミンの台詞は健気でした。
「まだ挨拶もしていないのに・・。どうぞよろしく。スミンさん」
この台詞は意外にもラストへの伏線となっています。
そこで初めて2人が向き合い、お互いを知るべく愛し合うようになります。
しばらく2人はじゃれ合うようにスミンの部屋で愛を交わし、しばらく幸せな蜜月を味わうのですが、残念ながらその幸せは長く続きませんでした。
ジェミンの裏切り
会社の御曹司であるジェミンには婚約者(キム・ジョンファ)がいます。
両親は息子の性的指向を知っていますが、結婚とはまた別です。
会社の令息である以上、ジェミンには後を継ぐ子供が必要とされていて、両親からは無理矢理に婚約者との結婚を決められており、息子に結婚を強要します。
しぶしぶ結婚という形へ身を引き裂かれるような思いでジェミンはスミンへの気持ちを断ち切ります。
しかし、ここで愛し合った2人の立場は逆転します。
今度はスミンが執拗にジェミンに迫るようになり、会社まで乗り込むほどです。
拒まれても何度もジェミンを恋い、求めるスミン。
そのスミンの姿に、立場と愛との間で悶え苦しんでいたジェミンは決断し、婚約者に自分が同性愛者であることをカミングアウトしてしまいます。
そしてスミンの愛に応えようとした矢先、2人の愛は結ばれることなくすれ違ってしまいます。
ジェミンが頑なにスミン拒絶していると感じたため、結果としてスミンがとった行動は━━。
『後悔なんてしない』キャスト
イ・ハン(後にキム・ナムギルに改名)
イ・ヨンフン
キム・ジョンファ
キム・ドンウク
『後悔なんてしない』感想
正直、観る前に「同性愛がテーマ」という作品なのは知っていたので、抵抗がありました。
無名時代のキム・ナムギルと新人俳優がコンビを組んだ愛情作品ということで、観てみたいけど、観るのが怖いという気持ちでした。
しかし、この作品は「同性愛」を超えた究極の愛を描いた物語でした。
愛にジェンダーなんて関係ないと気付かされます。
すれ違った2人がお互いを求めて昇華する究極のラブストーリーです。
裏切りへの報復
ジェミンに裏切られたと思ったスミンは、愛情が大きすぎて、その感情を復讐へと変えてしまいます。
裏切りの代償は大きく、スミンはジェミンをこの世から消そうと思ったのです。
それだけスミンはジェミンを愛していたのです。
実はジェミンが女性と結婚すると聞いた時も、頭では自分と身分が違うから別れるのは仕方ないとわかっているのですが、「学がないから?!勉強するよ。お金がないから?!働いて稼ぐから」と縋り付き、気持ちだけは離れることができないまでに彼を愛していました。
この時のスミンの必死さには、愛情以外の何があったというのでしょうか?!
そこまでして振り向かせたかったのに、自分を邪険にしたジェミンには愛するがこその憎しみが湧いてしまいます。
他の人のものになるくらいなら、という抱いてはいけない思いに襲われてしまったのでしょう。
仲間と2人でジェミンを襲い、深い山の中へと連れ去ります。
そこには、ジェミンを生き埋めにするべく、深い穴が掘られていたのです。
愛情に勝てないスミン
一度はジェミンを亡き者にしようと心を決めましたが、やはり、愛情には勝てず、穴に埋められていくジェミンの命が惜しくなります。
穴の底でもがきながらも、手は縛られ、口はテープで止められているので抵抗することもできず、ただ土に覆われていくジェミンを見ていると、愛する彼がいなくなる悲しみが強くなり、埋めている仲間を持っていたシャベルで殴ってしまいます。
逆上した仲間はスミンも穴へ落として立ち去ります。
土に埋もれかかったジェミンの側で横になり、空からはらはらと音もなく落ちて2人に積もっていく雪。
音の消えたそのシーンは、このまま2人で死ねたらいいと願ったスミンの本望だったのかもしれません。
気の毒なキャストたち
この物語には、主演の2人を助けるような、悲しい運命を受け入れなければならない重要なキャストがいます。
婚約者のヒョヌ
ジェミンの婚約者ヒョヌとして出演したキム・ジョンファが1人目です。
彼女は2003年のドラマ『1%の奇跡』でカン・ドンウォンと共に主演をしたこともある女優です。
この彼女を婚約者からカミングアウトされるという悲劇の女性にしています。
婚約者の女性からしたら、惨めな役割を担っているとしか思えません。
ずっとジェミンの婚約者として、新婚旅行先などを楽しみにしていたのに、同性愛をカミングアウトされ、他の男性へと走られたショックは計り知れません。
それどころか、今までの愛が偽りであり、自分は彼にとって何の価値もなかったのだと思い知らされ、嘆き悲しむことでしょう。
作品には彼女の心情などはありませんが、誰よりも気の毒な役回りです。
スミンの後輩
スミンの職場の後輩を演じるキム・ドンウクもまた2人目の悲しい運命です。
売れっ子のボーイになっているスミンに憧れ、田舎から出てきた彼はスミンを目標に金持ちのパトロンを見つけて、都会的ないい暮らしを夢見ていました。
スミンといつか旅行に行くのを楽しみにしていたけれど、ジェミンと想いが叶って店を辞めたスミンに1人旅行に旅立つことを告げ、金持ちのパトロンが出来て遠くから自分の車を見せます。
最後に携帯で、自分が好きなのはスミンだったと告白して去りますが、なんと事故で死んでしまいます。
愛した人の幸せを見届けて去って行き、そのまま事故で彼が幸せだと願いながら命を落とした後輩は、まだ本当の愛を得てもいませんでした。
スミンのジェミンを殺す計画には彼の死もあり、心がズタズタになったスミンは怒りを向ける先が必要だったのではないでしょうか⁈それが誰よりも愛した人であろうと。
後輩はそんなスミンを望んではいなかったはずなのに、死んだ後輩も気の毒です。
そして、2人は・・・
なんとか助かった2人は車に帰りますが、車は電柱に当たってしまいます。
まだ薄暗い朝ぼらけの中で、ジェミンは後部座席のスミンに身を乗り出します。
そこでスミンは「ごめん・・どうぞよろしく。ジェミンさん」とこの時になって、昔言われた挨拶をやっと返します。
見つめ合う2人、窓の外には事故を知った警官も駆けつけているのに、じっとジェミンはスミンの下半身に手を当てたまま、2人の世界は車内で完結しています。
彼らはこれまでも、そしてこれからも愛することに「後悔なんてしない」のでしょう。
『後悔なんてしない』まとめ
一目惚れ同士で結ばれる愛は本当に素敵だと思いました。
途中で邪魔な横槍が入ったり、揉め事が起きたりしますが、映画だからこれだけの大きな事件に発展するようにしているだけで、愛には誤解やすれ違いが付き物です。
ラストの2人の見つめ合う、切ないけれど、確かにお互いの愛情を確認した表情には、2人だけの未来がある、希望を見たように思います。
愛情は性別にかかわらず、愛する人なら、恋人や親子、友人にも抱く究極の感情だと思います。
この作品では同性愛を通してはいますが、恋人としての愛情の揺れ動く様を入れながら、お互いを想う最高の愛情として昇華させたのだと感じました。
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後悔なんてしない|日本語字幕フル動画を今すぐ安全に無料視聴する方法《韓国映画》感想・見どころも
2006年に韓国で公開された、キム・ナムギルがまだ無名俳優で芸名がイ・ハン時代の作品です。 韓国で初めて同性愛者としてカミングアウトしたイソン・ヒイル監督が「同性愛」を飾ることなく正直に描いた衝撃作と ...
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